ZETA DIVISIONの軌跡。VCT Stage1 Mastersを振り返る【後編:プレーオフ編】

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この記事は前回の続きです。日本代表ZETA DIVISIONのプレーオフについて振り返っていきます。

目次

プレーオフ

アッパー1回戦 vs G2 Esports

初めてのプレーオフ。相手はEMEA2位(1位のFPXがMastersを辞退したため、今大会では実質1位のチーム)のG2 Esports。Eスポーツファンなら誰でも知っている強豪チームだ。昨年の活躍も著しかったが、今年はメンバーを新たに入れ替え世界大会に臨んでいる。

直前にメンバー変更を行ったFnaticとは異なりベストメンバーのG2、初戦のDRX戦のような結果なることも考えられた。ファーストマップはスプリット、グループステージではNIPに守りを1ラウンドも取れず敗北したマップだ。

スプリット:7 – 13

ミッドで勝負し3キルを獲得するnukkye。ミッドへ行きづらくなるZETA。

ピストルラウンドを獲得し快調なスタートを切ったZETAだったが、前半は5-7での折り返しで終わる。nukkyとhoodyのミッド守りに苦戦し思うように作戦を通すことが出来なかった。

Aでオペレーターを持つm1xwellを見つけたZETA。すぐさまBにローテするも、そこには既に彼がいた。

ミッドを諦め仕方なくメインから進行すると、そこではM1xwellのオペレーターが待っている。EMEAトップチームのマクロは伊達ではない。

4vs2の人数有利だったが、AvovAとMeddoのコンビにクラッチされてしまう。

攻守交替で今度はZETAが守る。前半はリードで終わってしまったが、後半巻き返せるか。

しかし、結果としてはZETAは守りで2ラウンドしか獲得できなかった。その2ラウンドもdepの4キルとSugarZ3roのエースが決まったラウンドのみである。戦略面ではG2の圧勝と言えるだろう。

最終スコアは7-13。やはり完全体のEMEAチームは強かった。

ペイント弾を前提としたスモークを焚くAvovA。取ったエリアへそのままワープで侵入する。

守りでラウンドを取れなかった最も大きな原因は、ミッドの守りが上手くいかなかったことだろう。レイズのペイント弾やオーメンのシュラウドステップで簡単にベントを制圧され、そのままAへBへと展開されてしまった。

バインド:10 – 13

フレンジーで3キルを獲得するhoody

ファーストラウンド。Aショートに壁を張って一気に詰めて3キルを獲得したZETAだったが、hoodyのフレンジー3キル+Meddoのフレンジー2キルで返されてしまう。

不穏なスタートを切ったZETAだったが、Bロングで見せたdepの4キルなど相手のセットを止める、流れをこちらに引き寄せるプレイもあり着々とラウンドを取り返す。

6ラウンド目では、AvovAがフロム・ザ・シャドウズでAタワーにワープしZETAの気を引き付ける。他のラウンドでもAvovAはシュラウドステップでAタワーに乗るなどし、強気な姿勢を絶やさずZETAに圧をかけ続けた。

エースを取るTENNN。

しかし、ZETAも負けていない。第10ラウンドではTenがエースを決める。この試合のTenのフィジカルは世界最強と言っても差し支えないレベルで、ドライの勝負はほとんど彼が制していた。

防衛を7-5でリードして終えることが出来たが、攻めはG2のエリアコントロールにうまく時間を使わされてしまう。結局試合は10-13でゲームセット。ZETAはG2に敗北し、ローワーブラケット一回戦へ向かう。

やはり相手はEMEAのトップチーム。一筋縄ではいかなかったが、今までは雲の上の存在だった彼らに撃ち合いだけでも負けていない、噛み合いさえ良ければマップを取れる可能性もあったと分かっただけでも収穫だろう。

しかし、勿体ない場面もあった。後半Lazがアルティメット「ヴァイパーズピット」を使用してTenと一緒に防衛側スポーン地点まで詰めて、2人とも返り討ちにされたラウンドだ。もしあのラウンドを取れていたら結果はまた変わっていたかもしれない。

G2戦では良い場面も悪い場面もあり、自分たちの弱点を、そして強みを見つめ直す良い機会になったに違いない。1日休みを置いて、ZETAはローワー1回戦に臨む。

ローワー1回戦 vs Team Liquid

Team Liquidは昨年の世界大会の3分の2に出場し、直近の世界大会「VALORANT Champions」ではベスト4になっているEMEAの強豪チームだ。Eスポーツにあまり興味がない方でも名前やロゴぐらいは見たことがあるであろう、G2と同じ超名門チームである。

Liquidで注目したいのはScreaM(27歳)とNivera(20歳)だ。2人は実の兄弟で、ScreaMはCS:GOのレジェンドプレイヤー、Niveraも直前までCS:GOのトップチームに在籍していた、まさに最強の兄弟である。

その他の3名も世界水準のフィジカルや知識を持っており、全く油断できない相手だった。NiveraだけでなくJamppiのスナイパーも前回大会から目立っており、ピストルで負けても2ndでシェリフやマーシャルを購入してくる強気な姿勢が特徴である。

フラクチャー:13 – 7

前半ZETAの防衛、Liquidの猛攻を完全に抑えたZETAはなんと8連続でラウンドを獲得するなど絶好調、10-2で折り返しを迎える。ショーティーを使ってBタワーを守り切るLaz、スキルでの遅延でたっぷり時間を使わせ設置の時間を与えないcrowとSugarZ3roの守りが、時間をかけて攻めを組み立てるTeam Liquidに完璧に刺さっていた。

続く攻め。ZETAは自分たちがやった守り方を相手にさせない。吸い込み+フォールトラインで安全にAタワーを制圧する様は、ChampionsのFnaticを彷彿とさせる。またLazが詰め待ちで上手くワンピックを取るなど戦略的な攻めを見せてくれたが、残りの3本を取り切れない。そうこうしているうちに、Team Liquidが盛り返す。

11-7、ZETAはエコラウンドだ。Tenが自分のペイント弾で自爆してしまい、不穏な流れが立ち込める。

しかしここでSugarZ3ro、depが魅せる。

SugarZ3roは得意のスモークを使った戦い方に超人的なエイムで3キル、残った2人をdepがきっちり抑えスリフティー。これには実況も大興奮。Sugarh3ro、神の子depが垣間見れた瞬間だった。

これがきっかけでZETAは勢いをつけ、そのまま次のラウンドも獲得しフラクチャーを13-7の勝利で終える。

ヘイヴン:4 – 13

フラクチャーの勢いはどこへやら、続くヘイヴンは4-13で大敗を喫してしまう。

ブラジル1位のLOUDに13-3で勝利したLiquidのヘイヴンは本物だった。フェイクを用いて人数が少ないサイトを攻めるタクティカルFPSの基本戦術に、ZETAはうまくはめられてしまった。また、Niveraのオペレーターにも苦戦した試合だった。

DRX戦と同じようなやられた方も多く見られたが、決してZETAも良いところがなかったわけではない。

ヘイヴン戦のベストラウンド。ロックダウン+吸い込みでスパイク設置を妨害する。

5ラウンド目。時間をかけて攻めてくるLiquidに対し、完璧なタイミングでのロックダウン+グラビティウェルでスパイク設置を食い止めた。LazとSugarZ3roの阿吽の呼吸が見れたラウンドだった。

スプリット:13 – 7

カバーの体制を一切崩さずL1NKを囲い込むDepとTen

1ミリたりとも甘えを見せない、ZETAの完璧なピストルラウンドから試合がスタートする。

ミッドにアビリティを放ち進行を止めるZETA。

ZETAのスプリット守りはいつも通りヴァイパーとセージ、アストラでミッド進行を徹底的に止める形だ。初めの方は完全にミッド進行を止めていたが、ラウンドを重ねるごとにTeam Liquidもだんだんと攻略の糸口を見つけていく。アビリティが切れるタイミングで各種スキルを入れてエリアを取りに来るのだ。特にTeam Liquidは遠距離から味方を援護できるブリーチを採用しているため、Bタワーを守るのが非常に難しい。

EMEAの攻め方に翻弄されながら、6-6で攻守が交替する。

ドームスモークで耐えの形を作るSugarZ3roとcrow。

後半ZETAはピストルラウンドを取得し、武器が不利な3ラウンド目もcrowとSugarZ3roの見事な連携で勝利、Liquidを突き放していく。アビリティを上手く組み合わせて攻めるZETA、エリアコントロール面でもTeam Liquidを圧倒していた。

日本代表「ZETA DIVISION」の世界ベスト6が確定する瞬間。

12-7、ZETAのマッチポイント。LiquidはAでアビリティを合わせLazとTenと落とす。残るは3人。人数差もありこのラウンドは難しいかと思いきや、先頭のSugarZ3roが3キルでBサイトをこじ開ける。そのままスパイクを設置し、SugarZ3roがさらに2キル。エースで試合を締めくくった。

あのEMEA代表Team Liquidに日本のチームが勝った。これは奇跡などではなく、紛れもない現実だ。戦術、撃ち合い、日本の実力が世界に通用していたことは誰の目からも明らかだった。

最弱リージョンと言われ続けた日本はもうどこにもいない。世界で戦う強豪チーム「ZETA DIVISION」の軌跡はまだまだ続く。

ローワー2回戦 vs DRX

4月19日、ZETAはベスト4をかけたローワー2回戦をDRXと行う。下馬評はDRXの圧勝。それもそのはずだ、ZETAはこの大会で一度DRXに2-13と3-13で完膚なきまでに叩きのめされている。

BANPICKの時間、ZETAはここで勝負に出る。今年の大会でずっと続けてきたアセントBANを取りやめ、ヘイヴンをBANしたのだ。DRX戦(DAY1)とTeam Liquid戦でほとんどラウンドを取れなかったのが要因だろうか。DRXは当然、アセントをピックしてくる。

アイスボックス:13 – 10

ファーストマップはアイスボックス。前回は2-12で負けたマップだ。DRXがピストルラウンドを獲得しゲームがスタートする。しかし、3rdラウンドからはZETAのターンだ。前回の反省を活かしDRXの対策をしっかり練って来たZETAは、次々にラウンドを獲得していく。

対策①デフォルト配置の変更

DAY1、グループステージでのDRX戦
DAY9、プレーオフでのDRX戦(再戦)

上がDAY1の時の、下が今回のZETAのデフォルト配置である。

まず最初に見てもらいたい変化がSugarZ3ro(ヴァイパー)の位置である。初戦はアルティメットを使うラウンド以外ずっとBを守っていたが、プレーオフではA守りを多用している。

なぜ配置を変更したのか、その答えは次の画像1枚で説明がつく。

そう、Aサイトへのスパイク設置を阻止するためだ。DRXはセットプレイを重視する(アビリティ合わせが上手い)チームで、サイト内で普通に守ることはほぼ不可能である。しかし、DRXは設置後のカバーの配置や解除遅延、少人数戦も洗練されており、安易にリテイクに頼ろうとするとDAY1の時のようになってしまう。

そこでDRXを倒すために考案されたのがこの「とにかく設置させない作戦」である。DAY1ではcrowのショックボルトのみで設置阻止を狙っていたが、プラント音を聞いてから撃ってると結局設置が間に合ってしまう。かといって設置位置を予測して撃つのは難しい。そのため再戦ではヴァイパーのスネークバイト(ダメージが2倍になる弱体化を付与するため、ショックボルト1発でキル出来るようになる)を合わせた設置遅延を取り入れる。ヴァイパーを常にAスクリーンに配置しているため、いつでもスネークバイトを撃てるようになっているのだ。

  • オープン設置:スネークバイト+ショックボルト
  • ネスト設置:スネークバイト+ショックボルト
  • サーバー設置:スネークバイト+ショックボルトor速攻で壁を壊す

全てのプラント位置に対する回答を用意していたのは、ZETAの裏方の努力によるものだろう。選手とコーチ、アナリストが一丸になって作った対策だった。

また、このような設置阻止をされるとDRXはBへ行きたくなるが、そこにはDep、Ten、Lazの3名がどっしり構えている。こうなっては攻めづらい

また、毎ラウンド同じ配置同じ作戦を使うのではなく、ヴァイパーはBに行きAを3人で固めるラウンド(これはDAY1の時もやっていた)も取り入れるなど簡単に対策されない工夫も施されている。

対策②DRXが得意とするセットプレイを潰す動き

DAY1のZETA vs DRX。VS設置を通されてしまう。

VS設置。ミッドにバリアオーブを張り、ジェットがチューブ下から入ってクラウドバースト+アップドラフト+テイルウインドでBサイト2階へスパイクを設置。残りのメンバーはチューブを渡ってキッチンを取りに行くというDRXが得意としているセットプレイだ。

昨年から使用していた動きだが、DAY1の初戦では簡単に通されてしまう。

しかし、プレーオフでのZETAは違っていた。

crowがオウルドローンを流しチューブの足音を聞くと、Tenがすぐに壁を立ててスパイクキャリアーのBuZzを撃破。キッチンに走ってくる残りのメンバーも挟みこんで撃破していく。

やることが分かっていればそれを対策するだけ。対策の強み、そしてセットプレイの脆さが出たラウンドだった。

前回の反省を活かした、ZETAの対策が刺さった守りだった。DAY1は2-10で折り返していたが、今回は8-4で、逆にこちらが大きくリードして前半を終えることが出来た。

続くZETAの攻め、前回は2-13で負けたため攻めは3ラウンドしかプレイ出来ていなかった。AやBへ圧をかけるZETA、詰め待ちでワンピックを取ろうとするも、DRXはプッシュしない。時間が流れ仕方なくセットアップを開始するも、アビリティで進行を止めるDRX。ラウンド差は小さくなっていく。一向にミッドを使わないZETA。盛り返すDRX。

8-9。ついにラウンド数を逆転してしまう。やはり、DRXにはかなわないのか。

しかし、ZETAのタイムアウトを境に転機が訪れる。

9-10。Lazがミッド(チューブ下)へとラークを仕掛け、Bを覗いていたBuZzの横を取り不穏な流れを断ち切った。今までミッドを使ってこなかったのが活きたラウンドだった。

チューブを抜けてラークするLaz選手。
スパイク設置後、ミッドからAへ抜けて裏を取るLaz選手。

ミッドへの警戒が高まるDRX、しかしLazは再びラークを始める。キルと情報を獲得し、安全に引くLaz。理想的なラーカーだ。また、センチネルがセージしかいないDRX構成の弱点が垣間見えてくる。ミッドに罠が無い、ラーカーにとってこれほど好都合な状況があるだろうか

Lazの活躍もあり、ZETAがそのまま取り切り13-11でマップを終える。一週間前に2-13で負けたチームとは思えない、大会を経て成長する「ZETA DIVISION」の実力を証明した試合だった。

アセント:10 – 13

オウルドローンで隙ができたcrowをカバーするSugarZ3ro。

続くアセント。このマップはZETAが国内から一度も大会でプレイしていないマップだ。捨てマップなのか?隠しているのか?正しい答えは分からないが、ZETAが使っているエージェントは、個々のメンバーが他マップでも特に得意としているキャラだ。また、Tenが最後に大会でプレイしたアセント(LCQ vsFULL SENSE)ではキルジョイを使っていた。

負けたのに笑みを浮かべるZETAのメンバー

試合は10-13でDRXの勝利。しかし試合後、ZETAのメンバーは笑みを浮かべる、その真意は一体・・・?

スプリット:13 – 4

第三マップはスプリットだ。今までに何度も見せているマップだったが、なんとZETAは守りを10-2の圧倒的リードで終え、そのまま押し切り13-4で勝利してしまう。

なぜここまでラウンド差が付いたか。その理由は大きく分けて4つある。

①ミッドを進行できないDRX

ZETAのスプリット守りは一貫してミッドを重視している。ポイズンクラウドとネビュラでスモークを絶え間なく展開し、スネークバイトやスロウオーブ、バリアオーブでさらなる足止めをしていく。実際DRXはこのミッド守りに苦戦しメインからラッシュを仕掛けるしかない状況に陥っていた

この試合を見ていると「どうやってこれを突破すればいいのか」となってしまうほどだが、実はG2とNIP戦ではスーパープレイを出したラウンド以外で守りは全て落としている。これはG2とNIPにエリア取りをしやすいレイズとオーメンが採用されていることが理由だ。

一方DRXはレイズもオーメンも採用されていない。ミッドのエリア取りに使えるスキルがほとんどないため、一向に攻めれない。ジェット構成の弱みが出た試合だっだ。

②少人数戦の異状な強さ

4ラウンド目。

スプリットのZETAは少人数戦が異常なほどに強かった。4ラウンド目(3vs5)や5ラウンド目(3vs5)、10ラウンド目(2vs3)など人数不利ですら巻き返してしまう彼らの個人技、連携に世界がざわついた。

③ラークを抑えるTen

このマップでDRXはBuZzやMakoが度々ラークをしていた……のだが、Aやミッドを見張るTenが毎回彼らに撃ち勝ち、DRXの作戦をことごとく無に葬っていた

彼の撃ち合いが世界トップクラスなことは、このMastersを通して十分身に染みていたが、まさかここまでとは。もしTenが毎度ラークに撃ち負けていたら、ラウンド差はここまで広がらなかっただろう。

④メンタルで勝っていた

マップ「アセント」を取られたのに満面の笑みを浮かべるZETAのメンバー

この試合では何より、ZETAはDRXにメンタル面で勝っていた。それもそのはずだ、DRXはファーストマップを取られ後がないままアセントへ行くも、見たこともない構成に無駄に苦戦を強いられ辛勝。スプリットでも取れそうなラウンドを何度も覆され、メンバーは疲労していた。

DRXは勝っている時はこの上なく強そうなチームに見えるが、「負けていると焦ってtiltしてしまう」という大きな弱点を昔から抱えている。NIP戦を経験し鋼のメンタルを獲得したZETAは非常に相性が悪い相手だったのだ。

ローワー3回戦 vs Paper Rex

ベスト3以上を決めるローワー3回戦の相手は東南アジア代表のPaper Rex(PRX)だ。彼らの特徴はなんといってもf0rsakeNの強気な動きである。アジア最強デュエリストとも名高い彼のペースに付いていけないチームは、文字通り「破壊」されてしまう。3日間の休みを経てZETAが彼らにどう対応するか期待が高まる。

ちなみに、PRXは昨年の「APAC Last Chance Qualify」で日本代表のNortheption(SugarZ3roとTenが在籍していた)に負けている。しかしこの時のPRXはなぜかf0rsakeNがKAY/Oを使うなど様子が少しおかしかった。

アイスボックス:6 – 13

ミッドから展開するPRX。3vs5からラウンドを取られてしまう。
Lazのリピーク癖を読んだd4v41の攻めオペレーターが刺さる。

アイスボックスはZETAの対策をしていたPRXの庭だった。Bサイト2階に設置されたLazのランデブーを壊すショックボルトに攻めオペレーター、強気なエリア取りが刺さった試合だった。

さらに特徴的だったのがPRXの勝負の仕方だ。予測不能な場所から顔を出してくる彼らのスタイルは、高低差のあるアイスボックスでは更なる真価を発揮する。箱を使った上下の射線、アビリティを使った頭一つの勝負、全てが洗練されていた。また、PRXは攻め方も独特だ。普通のチームはミッドの主導権を握るとキッチンを通してBへ行くことが多いが、PRXはAへ流れる動きを多用してZETAの不意を突く。またd4v41の攻めオペレーターにLazやDepの前目の守りが崩されてしまった。国内戦では滅多に見れない、慣れない攻め方にZETAは苦戦した。

PRXは守りのペースも独特だ。強気に勝負してくるF0rsakeNの圧に屈しなかなか攻められないZETA。アビリティを流して情報を取ろうとしてもすぐに対応されてしまう。結局ZETAはPRXの守りに対応できず、アイスボックスを6-13で落としてしまう。

激戦区の東南アジアリージョンを1位で上がり、G2、Guardを倒して来たPaper Rexの力は確かに本物だった。

ヘイヴン:13 – 2

もう後がないZETA。ヘイヴンはPRXが今年全勝している得意マップ。そしてZETAにとってはDRX戦、Team Liquid戦で大きく差を付けられ敗北した正真正銘の苦手マップだ。

彼らの快進撃もここで終わってしまうのか、そんな心配は杞憂に終わる。

ファーストラウンド、各地で起きた戦闘を制しZETAはFLAWLESS(パーフェクト)でラウンドを獲得する。スモークや武器の特性を活かした、まさにパーフェクトなラウンドだった。

武器が不利な3rdラウンド。BとCをLazに任せ、4名でAを守る。

その後もZETAは2nd、3rdと着々とラウンドを重ねていく。前回、前々回で得たA守りの反省もしっかり活かしていたのが特徴的だった。人数をかけて前目で守り、ワンピックを取りながらショートと合わせて挟み込む。DRX戦でサイト内に縮こまっていたのが噓のようだ。世界を相手に成長を続けるZETA DIVISIONの姿がそこにはあった。

Depが相手の注意を引き寄せることで、後続が入りやすくなる。

今まで幾度となく失敗してきたAリテイクも今のZETAはそつなくこなす。手前で敵の人数を削っておくことで、サイト内のクロスの配置を作らせない、安定したリテイクを実現していた。ラウンド序盤から組み立てらたZETAの守りが、PRXに突き刺さる。また、キルジョイを採用していないPRXはミッドのコントロールが難しい。ZETAはその隙を突いてミッドを制圧しPRXの攻め方を限定していく。マクロ面ではZETAの圧勝だ。

そしてあろうことか、ZETAはあのPRX相手にヘイヴンで10-2の大差をつけて前半を折り返す。誰がこの結果を予想できただろうか。

裏取りのJingggを倒すcrow。

後半のファーストラウンド、ガレージを取ってCに攻めるも、PRXのアビリティ、寄りの早さに一旦足を止める。裏取りのJinggを倒し、Aへローテートするそぶりを見せるZETA。しかしCウィンドウにはLazが置いておいたアラームボットがある。ZETAは再びCへ切り替えし、後半もピストルラウンドを獲得する。

裏取りの2名を倒しAサイトへ走るZETA。

PRXがMastersで散々見せてきたデュエリストによるA詰めやミッド詰め。ZETAはしっかり詰め警戒を行い、スキルと人数で丁寧に、安全に処理する。その姿はまるで韓国代表DRXのようだった

そのままZETAが押し切りヘイヴンは13-2でZETAの勝利。圧勝だ。

スプリット:13 – 10

最後のマップはスプリットだ。直近の試合ではTLとDRXに勝利しているが、レイズとオーメンを採用しているNIPとG2相手には(スーパープレイ以外で)守りを1ラウンドも取れていない、不安も残るマップだった。

Benkaiの的確なモク抜きでファーストを落とす。しかしZETAはミッド守りやAのTenジャッジでラウンドを盛り返していく。

もしシーカーの発動が1秒でも遅れていたら、どうなっていただろうか。

Benkaiのラークが刺さり苦しいラウンドが続いたが、ZETAは何とか6-6まで追いつき折り返しを迎える。f0rsakeNとJingggの強気な動きにひやひやするラウンドも多かったが、いつも通りのZETAのミッド守りに、crowのベストタイミングのシーカーなど運も味方しリードを許さない結果になった。

トレイルブレイザーを流されるも、引かずに勝負に出るf0rsakeN

後半ピストルラウンド。A、B、ミッドへと広くエリアを広げるZETAだったが、f0rsakeNの強気な動きに圧倒されまたしてもピストルラウンドを落としてしまう。

続くラウンドもf0rsakeNは詰める、詰める、とにかく詰める。単身でエリアをコントロールしてくるf0rsakeNにZETAは押されていた。しかしこの動きは過去のPRXの試合でも見せている。ZETAは詰め待ちの配置でPRXを迎え撃つ。

ミッドを詰めるf0rsakeNと、2段の詰め待ちで迎え撃つcrowとDep

この強気な立ち回りがf0rsakeNの、PRXの強みである。これに飲まれてしまうと思うように攻められない。実際ZETAもこのプッシュに過剰に時間を使わされ、無理やりエントリーするしかない状況になることも多かった。

下水まで詰めるも、crowに撃破されるf0rsakeN

しかし、ZETAはラウンドを重ねるごとに徐々に彼のペースに慣れていく。f0rsakeNを落とし、スキルを合わせてサイトを制圧。気付いたらラウンドは13-10、ZETAの勝利だ。

これは夢か?……いや、現実だ。日本代表ZETA DIVISIONは確かに韓国代表DRXとSEA代表PRXに勝利し、アジア一位、世界三位に輝いている。NIP戦の8-12から一転、ここまで来れると誰が予想しただろうか。盛り上がりは止まることを知らない。

ローワー4回戦 vs OpTic Gaming

ローワーファイナル、世界は今大会のダークホース「ZETA DIVISION」に釘付けだ。

対戦相手はアッパーファイナルでブラジル代表LOUDに負けたNA代表OpTic Gaming。昨年のStage3の世界大会では準優勝するなどその実力は疑いようがない。

試合はBO5。お互いがBAN出来るのは1マップのみだ。ZETAはアセント、OpTicはブリーズでいつも通りのBAN、OpTicが初めにピックしたのはヘイヴンだった。

ヘイヴン:13 – 15

ファーストラウンドはZETAが2on2を制する。その後も順調にラウンドを取るが、yayのツールドフォースで流れが変わる

ツールドフォースで前へ詰めるyay。ロックダウンの範囲内で2キルを獲得する。

オペレーターは相手にしないというのが鉄則だが、彼にはそんな理論は通用しない。敵が見えなければ自分から行けば良いからだ。オペレーターを持って詰めてくるyay、エリアが狭まるZETA。攻めるサイトを限定させ、そこに人数を寄せる。シンプルで強いOpTicの守り方にかく乱されながらも、ZETAは7-5リードで前半を折り返す。

後半ファーストラウンド。ZETAはミッドを4名で詰め、人数有利の勝負を仕掛けてOpTicを圧倒する。3rdラウンドではPRX戦でも見せたAを複数人で詰める動きで武器不利を覆していく。4ラウンド目はOpTicがエコだったが、撃ち合いで負けてしまい2vs4になってしまった……のだが、SugarZ3roとDepが返してしまう。Team Liquidのフラクチャーの11-7の時を思い出すラウンドだった。

3vs2を返されてしまう。

ZETAはOpTicを大きく突き放し11-5。勝利が見えてくる……が、ここからOpTicが怒涛の粘りを見せる。ZETAがフリーにしがちなBサイトへの攻めや、Marvedの少人数戦の上手さが光り、ZETAは残りの2ラウンドを取り切れない。あと一歩のラウンドが何度も続くが、そのたびにMarverdが立ちはだかる。ついにラウンド数は12-12、オーバータイム(OT)に突入する。OTでもOpTicの堅実な攻め、守り(最終ラウンドのCロングのジャッジは、もはや未来人を疑うレベルだ)を崩せずヘイヴンは13-15でZETAはマップを落とすことに。

途中まで大きくリードし惜しいラウンドも多かったため、ZETAにとっては悔しい終わり方になってしまった。

フラクチャー:5 – 13

フラクチャーはZETAの得意マップ、そしてOpTicの得意マップである。

Marverdの置きに苦しめられるZETA。

前半、ZETAはOpTicの柔軟性のある守りに苦しめられた。yayのオペレーター、Victorのリレーボルト、marvedのスモークを使った意表を突く動き。ヘイヴンの悪夢が蘇って来る。アビリティとオペレーターを駆使した強気なエリアコントロールがZETAに刺さる。それでも弱気にならないZETAだったが、OpTicのメンバーは置きエイムも一流だ。撃ち合いでもエリアコントロールでも勝ち切れず、5-7でビハインド折り返しとなってしまう。

Bサイトに4名で圧をかけたOpTic。またAサイトにはVictorが一人、ラークで情報を集める。Bへの寄りを確認したOpTicはすぐさまAへローテート。この後3vs5の人数不利を返しOpTicはラウンドを取得する。
最終ラウンド。OpTicはBラッシュを選択する。頼みの綱のモク中SugarZ3roはもちろん対策済みだ。

ZETAの守りはTeam Liquidにも圧勝しており得意なことは間違いなかったが、OpTicはZETAの守り方をしっかり研究し対策していた。両サイドに圧をかけ揺さぶる、エリアを広げる動き自体は他のチームでもく見てきたが、最終的に攻めるのはA、とにかくAなのだ(Bの守りが固いのは、ZETAは過去の試合で何度も見せている)。しかし、OpTicもただAを攻めるだけではない。最終ラウンドはなんとBへのラッシュを選択した。

エリアコントロールで歴然とした差を付けられたZETAは、守りで1ラウンドも取れず5-13で敗北してしまう。

バインド:8 – 13

BO5、ZETAにとっては負けたら終わりの一戦だ。

Aへ圧をかけBにドライで入る。お手本のようなフェイクだ。

バインドのOpTicは、常にA、B両方へ行ける択を残しながら、時間を管理して的確にエリアを広げていく。エリアの取り方(エリアコントロール)、フェイクのかけ方、ワープの判断、詰め待ち、ヴァイパーズピットの対処、カバーの早さ、VALORANTの基礎から応用まで全てが完成されていた

守りのOpTicは一切詰めない。相手のセットプレイをサイト中守りとリテイクで対応するのがバインドでの彼らのスタイルだ。一人で無理な勝負はせず、味方と合わせる動きを徹底する彼らの守りはまさにVALORANTの教科書だ。

8-13

ZETA DIVISIONが負けた。ローワーファイナル、BO5で0-3。

5勝3敗。総プレイラウンド431、ベスト3。長かった彼らの戦いが終わった。完膚なきまでに叩きのめされたDRX戦から始まり、8-12からの逆転勝利で初のプレイオフ進出を果たしたNIP戦、初のEMEA相手への白星、DRXへのリベンジ、アジア最強をかけた戦い。長いようで短かった。

しかし、彼らの軌跡はまだ終わらない。世界大会は今年だけでもまだ2回(Stage2 Masters, Champions)開かれる。「ZETA DIVISION」の快進撃は始まったばかりだ。

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